カーボンオフセットガソリン??
長沼要
最近よく耳にする、CO2排出権ってなんだろう?
「CO2を出すために必要なお金」ということになります。細かいことは、京都議定書を十分理解する必要があると思うのですが、、ここではCO2を排出するのに、どれくらいお金がかかるのかをイメージしてみる。この排出権取引は、株などと同じく主要な市場があり、EUでは2005年から取引が開始されていて、現在、相当額が取引されている。
おおよその価格は3000円強/t。上昇し続けているので、あくまで参考。
さて、このCO2排出権、最近では商社等が購入し、小売りされています。つまり、我々個人にも買える仕組みが出来つつあるということ。ちなみに、こちらも参考として5000円/tくらいの相場のようです。
個人レベルになると、”t” という単位は馴染みがないので、"kg"換算してみると、5000 円/t = 5 円/kgとなる。さて、ではこの1kgとはどれくらいかをかんがえると、以前のブログにあるように、馴染みのあるガソリンを使う場合で考えると、約2.36 kg/L, ディーゼルで約2.64 kg/Lなのです。
つまり、ガソリンを1L使うということは、CO2を約2.4kg出すという事、つまり、約12円必要になるということ。
これまた、最近よく耳にするカーボンオフセットを排出権で行うという概念がこれなのです。まだ見た事ないのですが、カーボンオフセットガソリンを今設定すると、通常のレギュラーガソリンが160円/L だとすると、カーボンオフセットレギュラーガソリンは172円/Lになるということ。ちょうど、ハイオクとの差と同じくらいになるのが面白いですね。
さて、みなさん、仮にガソリンスタンドに行って、ちょっと高い、カーボンオフセットガソリンが売っていたら買いますか?
マイ箸やマイバッグを持つ感覚に近いと思うので、共感してもらえる人もいると思うのですが。(もっとも消費行為はかわらないので、全然違う!という指摘もあるかもしれませんが。。。)
これくらいなら、私は欲しいです。但し、悲しいかな、それを使っている事がわかるような何かも欲しいですけどね。いつも、というわけでなく、趣味に使う場合は、こちらを入れるなんて、使い方もありかも。
グリーン電力などがわりと一般的になってきた今、カーボンオフセットガソリン、カーボンオフセットディーゼルの導入を検討して頂けないでしょうか石油公団どの。環境省が環境税の導入を決める前に、先行して導入してはいかがでしょうか?
坂本龍一さんなどは、飛行機を利用するたびに、自分が出したCO2分の排出権を購入しているそうです。
原油価格
長沼要
ガソリン価格がまたもどりました。なぜかこの機に原油価格上昇分もあわせた値上がりが多く、以前より高くなっています。
ふと、この原油価格について思う事を書いてみます。
原油価格高騰を私は「良し」としています。
なぜなら、市場原理が働いて、消費が減少する。さらに、価格高騰によって潤うお金が、代替エネルギー開発に廻る、から…。
とかいてみて、本当か?と不安になる。というのも、原油市場に投機的にお金を入れている投資家の皆さんが、得られた利潤で環境にやさしい代替エネルギー開発にお金をまわしてくれているのだろうか?という疑問があるから。
しかし、投資家の皆様は先を見る目がある、つまり、結果的にしても意図的にしても先行開発的な資本投入が増える事になるだろう....ということは、先の「良し」というのは考えを変えなくてすむ。
さらに、次の疑問もある。というのは、今の原油高騰によるオイルマネーは産油国をも潤している。この産油国の人たちが、これまた環境負荷低減につながる投資をしてくれるだろうか?。残念ながら産油国の国々の事情を語れるだけの知識がないので、これは期待するとします。
ガソリン価格
長沼要
ガソリン価格が下がってきました。もちろん原油価格とは関係ない、税率の関係で、日本だけでの現象ですが。。。
暫定税率を見直すのは大賛成。
道路特定財源の一般化議論も賛成。
しかしエネルギー販売価格低下には反対。
現状ヨーロッパで約200円以上、アメリカでも約100円に近づいてきたガソリン価格を、下げて結果的に消費を促すことになる点はとても危惧している。CO2排出量削減が叫ばれているなか、逆効果になるだろうし、国際社会からも少し浮く感じがする。
もっとも、来月にはもどる可能性もあったりして、大きな混乱や消費増にはなっていないと思われるのは幸い。
さて、そんななか先週友人と給油に行ったら、なんと、ハイオクが売り切れ!!!
もう20年以上週に一回程度はガソリンスタンドを利用してきたが、こんな事は始めて!驚きました。
聞くと、ネットで最安値の店だったらしい。そこに日曜日の深夜23時頃行ったものだから完売だったということ。
というわけで、電気も含めてエネルギーを使うときには、きちんとその環境負荷を意識できる「税率」とその「用途」があきらかになった上で課税された適正価格になることを望みます。
煙
長沼要
カナダに行ってきました。まだ寒く、あちらこちらで白い湯気がみえたので、関連する話を…。
煙突からモクモクとでている煙?、これ水です。雲と同じです。
で、他になにが出ているのかというと、二酸化炭素です。こちらは常温では気体なので、無色透明でみえません。ちなみに、二酸化炭素が見えていると思われているドライアイスの廻りからでている煙も二酸化炭素ではなく、廻りの水分が冷やされたものです。
さて、なにを当たり前の事をと、言われる方もいますでしょうが、クルマの排気も一緒です。という事を言いたいのです。違うのは煙突(マフラー)から出てくる際の温度が違うので、水が水分となって見えるか、気体のままみえないかの違いです。冬の寒いときとか以外、クルマの排ガスは温度が高く、気体のままなのでなにも見えません。つまり水と二酸化炭素の二つがほとんど、という事。
では、排ガス規制にかかる物質は?!となるが、ガソリンもディーゼルもひっくるめて今規制対象となっているのは、CO, (T)HC, NOx, PM です。まず、これらの規制値というのはものすごく少ない濃度に対して規制しているということ。ざくっというと全体の1000分の一くらいの感じ。つまり、水と二酸化炭素の数百から千分の一くらいの微量成分について規制対象としていること。それをさらにミクロにみていくと、各年次とかでどんどん厳しくなっている。日本での最近では新短期~新長期~ポスト新長期(来年)といった流れ。
で、さらに何を言いたいのかというと、最近話題の二酸化炭素の規制と、いままでの排ガス規制を同じ感覚でみると、理解しにくいのは、多くの場合この桁の違いが原因だと思われる点。
理想はゼロで限りなくその理想に近づけられるCO, (T)HC, NOx, PMと、理想はゼロでもエンジン車からはなくす事の出来ないCO2は、考え方が違うということ。エンジン車からのCO2の削減は、ゼロを目指すのではなく、現状からどうやって効率を上げてその分削減できるかという目標となる。
人間や動物で例えるとわかりやすいかも、、、。CO2は呼吸をしている限り吐息にかならず一定割合ではいっているもので、無くすには、呼吸を止めるしかない。そして、CO, (T)HC, NOx, PMは呼気に含まれる悪臭のようなもので、体調がよくきっちり歯磨きをしていれば、なくせるものです。
ちなみに、二酸化炭素を出さないいくつかのクルマを先の例に例えると、
電気自動車は、息をしない!
水素燃料電池車や、水素エンジン車は、炭素の入った物を食べないで、水素ばかり食べている!
だから、排ガス(吐息)は水だけなのです。。。
ということに例えられます。
ところで、炭水化物たべないで生きられる人間はいるのだろうか、タンパク質とミネラルだけで生きられるのですか?わからないので、どなたか知っていればおしえてください。
タイアの色々
長沼要
タイアにはいろんな種類がある。しかし色は黒。一時期黄色とか赤色とかカラフルなタイアが一瞬世に現れたが、これまた一瞬にして消えた。まあ、なぜか黒くないとしっくりこないのだろう。
さて、こんな黒くまあるいタイアだが、わりと種類がある。幅とか扁平率とか内径とかをいいだしたら、それこそ無限に近く存在するのでそこまでは考えなくても、構造の違いとコンパウンド(表面のいわゆるゴム)の種類くらいまでは簡単だ。
まず構造では2種類。バイアスとラジアル。バイアスは斜めという意味、ラジアルは平行という意味。これはタイアの構造体に存在する鉄のワイヤーの巻き方の向きのこと。ワイヤーが斜めにぐるぐる巻きになっているものがバイアス構造で、平行にズラーとならんでいるのがラジアル構造。その構造上剛性の面でラジアルが優秀で、最近はほとんどラジアルタイアといっていいだろう。
さて、ではコンパウンドにはどんなものがあるか、ざくーと大きくわけると3つ。夏用、冬用、夏冬兼用、となる。それだけ?と思うかもしれないが、それだけです。もっとも、夏用のなかでも雨強い、弱い、転がり抵抗が小さい、大きい、などなど、冬用のなかでも実にいろいろな種類があり、細かくいっていくと切りがないので、3つとする。
もちろん、夏用はドライとウェットの比較的温度が高い領域に適する。冬用は雪や氷でも走れるようにとてもやわらかく出来ているので、温度の高いドライなどは不向きでふにゃふにゃになって、かわいそうになる。もちろん夏冬兼用はその中間域である程度の雪は走れるようにできているが、テカテカのアイスバーンなどは不得意。冬タイアに替えることをお奨めする。なぜか、夏冬兼用(=オールシーズンタイアとも呼ぶ)は北米でよく装着されるが、日本と欧州ではあまり普及していない。性格なのだろうか。
ところで、話題のクルマ日産GT-Rには20インチのタイアが設定されているが、なんとこの3種類のタイアも設定があるというのには驚いた。夏用と冬用まではわかるが、オールシーズンまで用意するとはやはり北米市場を狙っているだけある。
あ、そうそう、チューブの有無も分類としてある・・・・・・いや、いまはないか。。。ほとんど全部チューブレスです。
とにかく大事なのは、季節/路面にあったタイアを履く事と、適正な空気圧に管理する事。これはクルマの安全の基本です。
地域で燃料が違う?
長沼要
ガソリン、軽油、LPG、といえばクルマの燃料の代表的な3つだが、このなかで二つの種類は販売される地域で成分がことなる!って知っていました?
それは、軽油とLPGです。
まずは軽油。軽油は石油を精製してできるものだが、ガソリンよりも沸点が高く240℃~350℃の範囲だ。単一物質でないので、凝固点や沸点が何度!とはっきりいえないのだが、凍るというか固まり始める温度も(ガソリン、灯油に較べ)わりと高い。その流動点の違いでJISでも5段階の規格がある、というわけ。北国の軽油と南国の軽油は実は成分がことなるのです。つまり、地域と季節によって、最適なものが選ばれ供給されているのだ。
同じ話が自動車用LPG(オートガス)にも言える。こちらは1気圧ではガス体だから凍るということはないが、気温が低いと気化する量が小さくなり、まともに燃料圧が得られなくなる。もともとオートガスはブタンとプロパンの混合物だが、この二つの比率がことなる。北国仕様のオートガスにはほとんどプロパンが使われ、南国に行くにしたがってブタン比率が大きくなる。
気温変化の大きい地域をドライブする場合は、この事を覚えておいて、現地で満タンにするようにするとよい。スキー場で翌朝エンジンのかからないディーゼル車やLPG車がいたら、まず燃料を疑いましょう。
ちなみに、カセットコンロ用やアウトドア用に売っているガスボンベも成分はLPG。ブタン、プロパンといった成分構成に注意してみると、面白い。
プラグインハイブリッド
長沼要
さて、前回のご紹介した「外部電力式アイドリングストップ冷暖房システム」をみて、「おっ?」と思った人、そうです、プラグインハイブリッドに似ています。プラグインハイブリッドとは、2次電池を搭載するハイブリッド車で、外部から充電可能としたもの。ハイブリッド車として世界屈指のトヨタプリウスも現在プラグインタイプを開発中で、現在試験運行しているのです。エンジン車とバッテリー式電気自動車の中間ともいえるプラグインハイブリッド。ずばり今後の主流になるだろう。
サンプルが少ないが、現在あるプラグインハイブリッドはすべてエンジンハイブリッド車に近いプラグインハイブリッドなのだが、今後は、バッテリー式電気自動車に近いプラグインハイブリッドも出てくると思う。つまり、大きめのバッテリーを搭載して、エネルギーの多くは外部充電により、イザって時のためにだけ小さめのエンジンを搭載してそれによって発電、充電する、感じ。
また、ハイブリッドといってもエンジンハイブリッドだけではなく、水素燃料電池車にも2次電池が搭載されているわけで、簡単にプラグイン化することができる。
んー、クルマ側はかなり早くに普及しそうだが、そうなるとインフラ側がどうか心配になる。しかし、今もガレージには100V電源がフツーにあったりするので、コネクターの標準化等ができれば案外難しくない予感。そう遠くない未来に家のガレージにはかならず充電用コンセントがあることになるかもしれない。楽しみだ。
今後、あらゆるところで充電が可能になると、一番大事なのは、セキュリティー管理=電気ドロボー対策、かもしれません。
あったらいいなこんな装置~トラック用冷暖房装置~
長沼要
高速道路でのパーキングエリア、大型車がアイドリングしながら停車している。アイドリングストップをしてほしいが、どうも乗用車のようなわけにはいかないようだ。ドライバーは車内で仮眠をとっているので空調が必要なのだ。今の時期であれば関東エリアでも外気温が0℃前後もめずらしくなく暖房は欠かせないし、夏になればエアコンなしでは居られないだろう。しかし、もったいない。
このもったいないを解決するシステムがある。東京電力と日野自動車が2006年から実証実験を行い、昨年運用を開始したこのシステム、正式名称は、「外部電力式アイドリングストップ冷暖房システム」だ。簡単に説明すると、トラックの冷暖房を電力駆動にして、外部から受電可能なようにコンセントを設けたもの。失礼ながら特に難しい技術でもなく、コロンブスの卵的な発想で、実に有効的なシステムだと思う。実証実験ではなんと97%ものCO2削減効果と燃料消費効果があるとの事。すばらしい!
さらに、エンジン騒音もなくなるので、周囲への騒音公害もなくなるし、そもそも仮眠しているドライバーにとっても快適ではないだろうか?!少し細かくみてみると、このシステム、冷房は200V電源を使い通常走行時と同じ状態をエンジン停止時にも可能としているが、暖房はどうも100V電源で使える家庭用の毛布などを使うようになっている。んー少々寂しい気がするのは私だけだろうか。暖房も通常走行時と同じように空調で出来るようになればよいのにと思う。オイルヒータのようなものを設置すればとても快適な暖房となるだろう。
とまあ、まだまだ良くするアイデアが出る段階だが、まずこのシステムを標準化して車両への搭載と、高速道路のSA/PAやトラックステーションへの設置を進めて頂きたい。このように、だれもが歓迎できる新システムには諸手をあげて賛成したい。
横断歩道から思う事
長沼要
横断歩道でのある出来事から思うこと。
信号のない横断歩道は、歩行者優先。しかし、現状は歩行者がクルマの流れを待つケースのほうが多い。
先日クルマを運転中、横断歩道で小学生が手をあげて渡ろうとしていたので停まった。しかし、同じく停まるだろうと思った対向車が止まらずに突進してきた。極めて危ない状況。幸いにもその小学生達はこのような状況になれているのか、対向車の安全も十分確認してから渡っていった。決まりに則って停まることによる危険が増大するいい例だったので、コメントしたい。決まり、マナー、は全員が守って初めて有効になるという例だ。
このケースでの問題点と改善案を考える。
・ 歩行者優先という横断歩道の原則を徹底するには、あまりにも非現実的な設定が多い。現状、信号のない横断歩道が、交通量が多く流れが絶えない幹線道路に設置されている例がある。このような現実的に決まりが守れない状況にある横断歩道は、信号式にするか廃止すべきではないだろうか。
・ 幹線道路ではなく、生活道路で適切に設置されている横断歩道付近での例でも、走行車両の速度が高すぎる。もちろん制限速度による規制は妥当なのだが、徹底されていないので、そのような生活道路は30km/hを徹底させる
さらに抜本的な原因を考えてみる。多くは非合理的・非現実的な法規制が、ドライバーの法遵守精神を欠けさせていると思う。メリハリがなく、合理性があるとも考えられない速度規制がいい例だが、だれもが納得し、守るべきだと考えられる法規制であれば、遵守するドライバーが増え、モビリティが円滑に進む。しかし、現在の日本のように逆のケースが多い場合、先の例のように法規制が逆効果になるという事を考えると、早急に見直しが必要だと思われる。
法規制の制定、運用、取り締まりの全てが同じ考えと目的のもとに機能することが大事で、これらに道路設計と車両設計が加わるとまさにモビリティデザインだと思う。日本のモビリティは我々世代とほぼ同じ約40年の歴史だと言われる。大衆車の普及から始まり、高度急成長を経験し、交通事故急増の悲劇、排ガス問題を経験し、現在、再度モビリティの価値を見直すと時期に来ている。いままでの貴重な経験を基に、グランドデザインを造り直すことで、快適、安全、環境を飛躍的に向上させることが出来るのではないかと期待する。
横断歩道で感じた危険から、話が大きくなったが、道路、クルマ、ドライバー、規制という個々のデザインだけではなく、モビリティのグランドデザインを描く必要性を強く感じている。
飛行機とのCO2排出比較
長沼要
先日行われたハイリゲンダムサミットで、EU,カナダ、日本が提案した「2050年CO2半減」を検討することに合意を得るなど、世界的にCO2排出量削減にむけた動きが活発化している。クルマ(乗用車)から排出されるCO2排出量について欧州では2012年には平均130g/kmにするという動きがあるが、他の乗りものはいったいどのくらいなのだろうか?ものすごいエネルギーを使ってそうな飛行機と比較してみよう。
ANAの環境レポートには航空燃料によるCO2排出量の抑制という項目で、1990年からの推移が示されている。それによると、最新(2005年)のデータで約90g/kmだ。つまり達成不可能とまでいわれるくらいに厳しいクルマの目標値である130g/kmよりもすでに2割以上も良いことになる。おそらく現時点のクルマは平均で200g/km弱だろうから、クルマの約半分くらいになる。
ちまたではよくこういう比較がされて、クルマは一番CO2排出が多い!と叩かれる。それらの意見に反論する意図はないが、少なくとも計算背景を知った上で数字の比較がなされ、あらゆる意見が出る事を期待して少々算出背景をみていこう。
先のANAのデータにある標記そのものは約24g-C/ASKだが、これに44/12(=CO2の分子量/Cの分子量)を掛けて約90g/ASKとした。そして対象はANA全路線、全飛行機とある。つまり、747も767も、国内線も国際線もゼーンブの平均値。ある意味モードは実モードだから精度は高い。なお、ANAは2008年から燃費のよい ボーイング787型機を世界初導入するなど、環境対応へ積極的な会社なので、この数値は航空業界のなかでトップクラスと考えてよいだろう。(ちなみにJALは同様なデータの単位にg/ATKを使っていたので換算が困難であったのでノーコメント。「ATK=Available Ton Kilometers /有効トンキロ。供給輸送量の指標の一つで各飛行区間の有効重量にその区間の距離を乗じたものの合計。」)
ここで注目して欲しいのは「ASK」。「ASK=Available Seat Kilometers /航空会社の販売可能な座席数に飛行距離を乗じたもの」と注がある。つまり、ほぼ定員でフライトした際の仮定と理解していいだろう。つまり分かり易く単位を替えると約90g/ASK=約90g/km/人となる。
さて、クルマの場合。例の130g/kmという目標値。これは欧州での規制なので欧州での燃費/排ガス測定モードだ。日本の10.15モードより高速主体の測定モードである。クルマの場合、一般ユーザーがどれだけ走行しているかというデータを正確に測定するのはほぼ不可能だから先の飛行機のような実測定を行うのは不可能だ。
そして、次に乗車人数。クルマの場合、人数に対する考え方は入っていない。測定モードの規定で重量計算のために人数が規定されているが、その規定人数で割る事はしていない。130g/kmという数値はあえて単位を正確に示すと130g/km/台、となる。つまり、一人で乗ると、130g/km/人。二人で乗ると、65g/km/人。4人で乗ると、32.5g/km/人となる。厳密には乗車定員によって、多少燃費が変わるのでその分変化があるが、誤差の範囲と仮定する。
もう分かって頂けたと思うが、将来の目標値ではなく現状の仮定(200g/km)でもクルマは定員乗車によっては必ずしも飛行機より悪いということにはならない。
以上は私なりの前提、仮定のもとでの検討だが、ここでクルマがいい、飛行機がいい、などと比較することはしない。クルマにはクルマの、飛行機には飛行機のモビリティの価値があり、その価値を計算に入れていない評価指標で比較をする事自体が意味がない(限定的)と考える。その価値はスピードかもしれないし、快適性、かもしれないし、その他、いろいろあるだろう。
ある比較をする場合にはその比較結果よりも、前提、仮定を注意深くみると面白い。たいていそこから意図が読み取れたりする。