ITS 11 ブログ

ITS対応度でクルマを選ぶ時代がやってくる!?

岡崎五朗

 ITSとは高度道路交通システムの略。要はハイテクを使って渋滞や事故を減らし、安全で快適な移動を実現するためのシステム全般、と考えればいい。VICS搭載ナビによる渋滞回避はITSのど真ん中の技術だし、携帯の渋滞情報を見て自分で渋滞のないルートを探すのも、ちょっとローテクだけどITSの一部だ。

 そんななか、なかなか便利で面白そうなサービスが始まった。トヨタ車が搭載しているG-BOOK対応ナビと、トヨタがGAZOO上で運営しているG-BLOGとの連携サービスだ。ガイドブックの紹介記事よりもユーザーの生の声のほうが信用できるから……かもしれないが、ブログに書いてあるおすすめレストランやプレイスポットを参考にして出かける人が増えている。そんな人にとって、G-BOOKとG-BLOGの連携サービスは最高に便利だ。自宅のパソコンでG-BLOGを開くと、項目別、地域別に様々なブログ情報が載っている。それを使ってお目当ての場所を検索し、情報をG-BOOKセンターに送信。クルマから再度G-BOOKセンターにアクセスすれば、一発で目的地設定ができるのだ。

 もちろん、PCでの検索を省略していきなりナビからG-BLOGの情報にアクセスすることもできるし、自分のお気に入りの場所をブログ形式でアップロードしてみんなと情報を共有することもできる。現状ではG-BOOK対応ナビでもトヨタ純正でしか使えないが、もし自分のナビが対応していたら、ぜひ使ってみることをおすすめしたい。というか、今後はこうしたサービスの充実度でクルマやメーカーを選ぶ人が増えていくだろう。ルックス、価格、走り、燃費、使い勝手などに加え、ITSへの対応度が商品力を大きく左右する時代は、もうすぐそこまできている。

街でも使える多機能型ETCその2

岡崎五朗

前回お伝えしたIBAサービスに関する話題をもう一度。軽くおさらいをしておくと、IBAサービスとは多機能型ETC車載器を利用したシステムのことで、普通のETCが高速料金の支払いだけに使えるのに対し、IBAサービスに加入すれば対応する有料駐車場でも現金やクレジットカード要らずで支払いができるようになる。「街で使えるETC」がキャッチフレーズだ。

 自宅近くに対応施設があるからなのだが、使ってみるとなかなか便利。ETCを使うようになると高速道路の料金所でいちいち停まるのがひどく時代遅れで面倒なことに感じるようになるが、駐車場だって同じことだ。入るとき駐車券をとって、デパート等の場合はあと1000円買えば2時間無料だなとか思いながら買い物をして、スタンプを押してもらって、出るときはゲートで精算。いままで意識しないでやってきたこうした一連の手間から解放されるのはとても気持ちがいい。

 買い物をしても駐車料金はタダにならないの? という疑問をもった人もいるはず。たしかに、現状のIBAサービスのシステムでは、店舗で買い物をしたかしないか、いくらしたかという情報を車載器側に取り込むことはできない。そんなこともあって、わが家がよく利用する某デパートの場合は、IBAサービスを利用してノンストップ駐車をした人は、買い物をしなくても2時間までは無料で駐車できるようになっている。ウィンドウショッピングをするだけでもOKというわけだ。さらに、買い物をたくさんする人は翌月の駐車料金が最大5時間まで無料になる延長サービスもある。5時間タダで停められるなら、駐車料金を気にせずに買い物をして食事をして近所の映画館に映画も観にいける。

 ただし延長サービスを受けるには、別途発行されるスタンプカードに買い物をする度にいちいちスタンプを押してもらい、たまったらサービスカウンターまで持参……と笑っちゃうほど前時代的な作業をする必要がある。そもそもそんなに高額な買い物をしないわが家にとっては面倒なだけ。スタンプカードが即ゴミ箱行きになったのはいうまでもない。

「街でも使える多機能型ETCその1」

岡崎五朗

 ETCの普及が本格化してきた。車載器の販売台数は累計で1684万台に達し、利用率も首都高速の73%を筆頭に全国平均で66%に達した。つまり、高速道路の料金所を通過する車の3台に2台はETCを装着しているということだ。

 そんな状況のなか、次世代ETCのサービスが始まっている。実はまだほとんど知られていないのだが、新しモノ好きの僕としては見逃せないということで、早速多機能型ETC車載器なるものを自分のクルマに付けてみた。定価は1万9800円。キャンペーン中で取り替え工賃は無料。さらにガソリン満タン1回分無料サービスも付いていた。

 それはそうと、そもそも多機能型ETCって何? と思う人も多いはず。ひとことで言えば、高速道路以外の支払いもノンストップ&キャッシュレスでできるサービスのこと。多機能型ETC車載器を取り付けたうえでサービス登録をすれば、対応しているガソリンスタンドや駐車場、民間有料道路(現在はTOYOターンパイクのみ)、フェリー等で車載器経由の支払いができる。将来的にはファミリーレストランやファーストフードでも利用できるようになる予定とのこと。また、多機能型ETCがキャンペーン情報やクーポンを受信して、自分の携帯にメールしてくれるサービスもすでに始まっている。

 ただし問題は、対応施設がまだまだ少ないこと。使える場所が増えてくればかなり便利に使えるはずだが、ちょっと割高の車載器に加えサービス登録料3150円がかかってくるのは痛い。

 幸い、自宅近くには対応したデパートの駐車場とガソリンスタンドがある。とくにデパートは有り難い。妻が週に1~2回買い物に行っているのだが、駐車券なしのノンストップは快適そのもの。しかも買い物をしなくても2時間まで無料で停められる。対応施設も徐々にではあるが増えているようで、先日東京駅の丸ビル駐車場を利用しようとしたら、駐車券を取らずにゲートが自動的に開いた。その他にも、秋葉原UDXパーキングや横浜ランドマーク駐車場など、関東を中心にサービスをしている。対応施設など詳しいことを知りたければ、HP(http://www.itsbiz.co.jp/)を見てみるといいだろう。

これなら使える! 最新型インテリジェントパーキングアシスト

岡崎五朗

 レーダーを使ったアダプティブクルーズコントロールや、追突軽減ブレーキ、プリクラッシュセーフティ、画像認識技術とその解析技術を駆使したレーンキープアシストなど、最近のハイテクはすごい。試すたびに「クルマもついにここまできたか」と思わされる。だが、まだ高価なため普及率という点ではいまひとつだ。

 その点、カローラ・アクシオ&フィールダーが搭載してきた第3世代型インテリジェントパーキングアシストは賞賛に値するハイテクだ。マークXやエスティマが採用している第2世代型は、カタログを読んでいるかぎり「便利そうだね」と思えるのだが、いざ使ってみるとなかなか思い通りの結果を出してくれなかった。03年に世界で初めてプリウスが採用した第1世代型と比べれば、白線認識機能を加えることで精度は上がったが、それでも駐車予定位置を示す緑色の枠が微妙にずれ、手動による微修正(これがかなり面倒)を求められることが多かったからだ。

 もちろん、運転に自信のない人にとっては有り難い装備だったとは思うけれど、ある程度の腕がある人なら、まず間違いなく「自分で停めたほうがずっと楽だし早いね」と感じたはず。その点、レクサスLS460に続いてアクシオ&フィールダー、そしてブレードにも採用された第3世代型は、車両左右にある超音波センサーでクルマの停まっていない「駐車可能スペース」を検知することで、駐車予定位置の確定精度を飛躍的に向上することに成功した。

 実際に使ってみたのだが、かなりの確率で、液晶モニターに映った停めたい場所をピンポイントで確定してくれる。あとはハンドルから手を離しブレーキで速度調整しつつ後退するだけ。ここまで完成度が上がってくれば駐車が苦手じゃない人でも使いたくなると思う。LS460だけなら話しは別だが、カローラに採用されたということは、採用車種は今後どんどん増えていくはず。とにかく面白くて便利な装備だから、ディーラーなどで一度試してみる価値ありだ。ちなみに、アクシオでは4万2000円のオプションとなる。

駐車違反取り締まり強化のその後

岡崎五朗

 2006年6月に始まった駐車違反取り締まりの強化からもう少しで1年。当初は駐車車両が減ってそうとう走りやすかった都内の幹線道路だが、喉元過ぎれば熱さ忘れるではないけれど、最近はかなり元に戻ってしまったような感がある。

 先日、都内の瀬田から国道246号線を通って都心まで行ったのだが、コンビニやラーメン屋の前には必ずといっていいほどクルマが停まっていて、片側3車線のうち左側1車線はほぼ使い物にならない状態。「ニーヨンロクは最重点路線だったハズなのになぁ」と思いつつ民間監視員の姿を探してみると、案の定誰もいない。監視員がいなければ停める奴がでてくるのも当然だ。

 取り締まり強化には賛否両論があるようだが、僕は条件付きで大賛成。なぜって、渋滞の激しい幹線道路をこれから拡幅するとしたら、莫大なカネと時間がかかるからだ。駐車車両を一掃すれば、実質的には1車線分の拡幅と同じ効果がある。金額換算すれば、国道246号線の東京区間だけで数兆円分にはなるのではないか。

 にもかかわらず、先日の246号線に民間監視員の姿はなかった。でもって、これが不思議なんだけれど、停めてもたいして迷惑にならないような場所にかぎって現れるのだからタチが悪い。実際は民間監視員の責任ではなく、監督する警察の指導力不足か認識不足のせいなのだが。

 ここで提案。渋滞の激しい幹線道路には民間監視員を集中的に配置して徹底的な取り締まりを行う。一方、商店街や交通量の少ない道など、停めても迷惑にならない場所はパーキングメーターを増やすなどして合法的に停められるようにする。こうしたメリハリがなければ、いつまで経っても取り締まり強化はドライバーの共感を得られないだろう。

自動車特定財源の一般財源化は筋違いである

岡崎五朗

 なぜかいまひとつ関心が集まっていないけれど、われわれ自動車ユーザーにとって非常に重要な問題。道路特定財源の一般財源化問題を考えてみたい。

 道路特定財源とは、自動車税、重量税、取得税、ガソリン税など、国と地方会わせ8種類の税金のこと。われわれがクルマを買い、所有し、走らせるとかかってくるもので、総額は5兆8000億円!にものぼる。

 自動車ユーザーが支払っている税金なのだから、自動車ユーザーのために使おうということで、従来は道路整備を中心に使われてきた。だから「道路特定財源」というわけだ。

 ところが一般財源化する、つまりクルマには関係のないところにも使っちゃえ、という動きが出はじめている。というか、実はすでに一部実行に移されているのだ。07年度予算では重量税として集めた税金のうち1806億円が道路整備以外に使われることになった。重量税(06年で5700億円)のみは法律で使途を定めていない(しかし創設時の了解事項にはなっていた)ため、法改正抜きで一般財源化できる……という抜け道を上手に使ったのである。これを突破口に法改正までこぎ着け、他の税金もまとめて一般財源化しようというのが安倍政権の狙いだ。

 僕は、道路特定財源の一般財源化には反対する。もちろん、道路特定財源が利権まみれの道路族が暗躍する温床になっていたのは否定できない。建設業者を儲けさせるために道路をつくるという本末転倒な話しがなかったともいわない。けれど、それとこれとはまったく別のハナシ。道路は自動車に乗る人が使うものだから、受益者に余計に税金を払ってもらう……というのが道路特定財源の骨子だ。その一般財源化は受益者負担の法則と矛盾するものであり、自動車ユーザーいじめである。取りやすいところから取るという安易な発想といわれても仕方ないだろう。

 政府は道路特定財源が余っているから……と主張しているが、カネが余ったのならクルマにかかる税金を引き下げるのが筋というもの。そもそもわれわれユーザーは「暫定増税」と謳いながら30年も続いている割高な税金を支払っているのだ。たとえば1リッターあたり48.6円というガソリン税は本来の税率の約2倍。しかもそのガソリン税にさらに消費税がかかっているのである。

 自動車ユーザーにとって不公平きわまりない道路特定財源の一般財源化問題にもっと関心をもち、もっと怒り、声をあげて反対するべきだ。まずはJAFが行っている道路特定財源の一般財源化に反対する署名活動に参加してみてはどうだろうか。

http://www.jaf.or.jp/data/06tax-thanks/index.htm

車線別速度規制

岡崎五朗

 最高速度の引き上げを議論するとき、必ず出るのが「事故が増えるから反対」という意見だ。たしかに、クルマの運動エネルギーは速度の自乗に比例するわけで、100km/hが140km/hになれば運動エネルギーはおよそ2倍に達する。「運転」という行為を運動エネルギーの制御と考えるなら、難易度は間違いなく高まる。
 それはクルマにとっても同じこと。100km/hと140km/hでは緊急危険回避を想定した急なステアリング操作での挙動はまるで別モノである。
 しかし、これまで書いてきたように、高速移動への憧れをそう簡単に諦めるわけにはいかない。というか、ドライバーのモラル向上とクルマの進化が足並みを揃えさえすれば、現状の高速道路でも140km/h制限は無理な相談ではないと思うし、第2東名のような素晴らしい高速道路が完成すれば、140km/hなど"たかが140km/h"と言えるようになると僕は思っている。ただし、これまでの最高速度設定や、今後高齢ドライバーが増えていくことを考えると「私は怖くてそんなスピードは出せない」という人の身になって考えることも重要だろう。
 そこで注目したいのが車線別速度規制だ。有名無実化した「走行車線」「追い越し車線」を廃止し、代わって「低速車線」「中速車線」「高速車線」を設ける。その上で、それぞれの最高速度を高速車線140km/h、中速車線120km/h、低速車線100km/hというように区分するのだ。あるいは、全車線の最高速度を140km/hに設定した上で、最低速度を130km/h、100km/h、70km/h程度にするのも合理的な方法だろう。
 こうすれば追い越し車線を合法的に活用できることになるし、100km/hのクルマを101km/hでノロノロ抜いていくようなドライバーが追い越し車線(高速車線)に侵入し、延々と走り続けるのも防ぐことができるはずだ。

「走行車線と追い越し車線」

岡崎五朗

 左側通行である日本の高速道路の場合、進行方向右側、中央分離帯寄りの車線は追い越し車線となっていて、「追い越しをするとき」、「進路変更禁止に従ってそのまま通行するとき」、「接近してきた緊急自動車に一時進路を譲るとき」、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」など、限られた場合のみ通行できる車線だ。簡単に言うと、追い越しを終了したらすぐに走行車線に戻りなさい、戻らなければ捕まえて1点と反則金を支払わせますよということだ。
 交通量の少ない道路ならまだしも、混雑気味に流れる高速道路では誰もこんなルールを守っていない。というか守る気もしないし守れない。もし守ったら、片側3車線の道なら2車線、片側2車線の道なら1車線に、実質通行できる車線が減り、大渋滞が引き起こされるだろう。まあ、現場の警察官もそのあたりは理解しているようで、滅多なことでは捕まえないようだが(その代わり、速度超過の計測をできなかったとき腹いせで通行区分違反の切符を切ることはよくある)。
 僕としては、カビが生えたこんなルールはいい加減破棄すべき時期だと思っている。とくに、第二東名の140km/h構想に絡めて考えると、抜本的な見直しの必要性が浮かび上がってくると思うのだ。理由は次回に。

第2東名の140km/h構想を守れ

岡崎五朗

 東名高速を走っていると、建設中の高速道路を見かけることがあるはずだ。あれは2012年に一部区間の開通を予定している第二東名。計画中の第二名神と合わせ、全線開通すれば全長460㎞に達する高速道路で、総事業費は9兆2000億円! すでに過密状態にある東名高速を補完する新しい大動脈として期待されている。
 注目したいのは、多くの区間が140km/hという、かつてない設計速度でつくられていること。全線6車線に加え、カーブも勾配も緩く、路肩も広く設計されている。ある試算によると、従来6時間40分かかっていた東京~西宮・神戸間を3時間50分で走行できるようになるという。
 第二東名の建設に対して一部から「無駄」という意見が出ているようだが、個人的に日本の最高速度規制は低すぎると思っているから、第二東名の140km/h構想は大歓迎だ。新幹線だって速度を上げることで飛行機との厳しい競争を戦っている。クルマだって同じこと。目的地に早く安全に着けることはとても重要だ。
 ところがこの構想に思わぬところから横やりが入った。警察庁である。「道路公団(いまは民営化されているが)がわれわれに相談もせず勝手に140km/h構想をぶち上げるのはケシカラン」と、いたくご立腹しているというのだ。速度規制は自分たち(実際には公安委員会)が決めることなのに、事前に相談がなかったとへそを曲げているらしい。根回しなく140km/h規格で建設を進めた国土交通省にも問題があるが、警察庁の頭の固さといったらもう救いようがない。いい道路ができたのならぜひ検討してみましょうというのが普通の感覚だと思うのだが……。典型的なお役所仕事である。
 しかし、前述したように第二東名の大部分は140km/hを前提にカーブの少ない設計になっていて、大部分の用地もそれに沿って買収済み。勾配を小さくするため橋脚構造でつくられている部分も多い。大金を投じ、これほどまでに理想を追求した贅沢な道路を造ったのに、へそを曲げた警察庁によって制限速度の140km/h化は空前の灯火になっているという。このままだとうまくいって120km/h、最悪の場合は他の高速道路と同じ100km/hまで抑え込まれる可能性すらある。そうなれば、巨額の建設費の多くをどぶに捨てるようなもの。一部開通まであと6年。いまこそドライバーは立ち上がり、140km/h構想をバックアップするべきだ。お役所を動かすのは政治。政治を動かすのは世論なのだから。

アウトバーンの安全を支えているもの

岡崎五朗

 前回に引き続き、今回もアウトバーン関連の話題を。日本とドイツでは交通量も違うし、道の構造も違う。だからアウトバーンの速度無制限を日本の高速道路に持ち込むわけにはいかないのでは? と思う人もいると思う。もちろんその通り。環境が違えば出せる速度も変わってくる。ドイツの地形は日本でいうと北海道に近く、急勾配や見通しの悪いカーブは少ない。渋滞が増えたとはいえ、交通量だって日本と比べたらまだまだ少ない。だから僕は、日本も高速道路を速度無制限にすべきだなどと主張するつもりは毛頭ない。実際、アウトバーンも速度無制限区間は減り、130km/h、場所によっては100km/h制限のところもある。
 でも、だからといって最高で100km/hはいくらなんでも遅すぎる。クルマの性能が上がり、実際に追い越し車線は120km/h程度で流れている。レーシングドライバーでもない普通のドライバーがごく普通に120km/hプラスαで走っているという現実。この現実こそが、最高速度100km/hという規制が実態に合っていないことの証明であり、最高速度引き上げに向けた議論を始めるべき最大の理由だと思うのだ。
 もちろん、走行速度の上昇はリスクを孕んでいる。事故が起きる確率はさほど高くならないだろうと個人的には思っているが、事故が起きたときのダメージは間違いなく大きくなる。しかし、だから100km/hのままでいいというのはあまりに後ろ向きな考え方であり、重要なのはどうしたら安全に速度を引き上げられるのかを考えることだと思う。
 ここでお手本となるのがアウトバーンだ。速度無制限というとある種無法地帯にも思えるが、実は正反対。アウトバーンには厳しい掟がある。遅いクルマは後方に気を配り、速いクルマに進路を譲らなくてはならないという基本的なルールと、それを忠実に守るドライバーが、他に例のない速度無制限という環境下での安全を担保しているのである。
 実際、走行車線から追い越し車線にフラフラと侵入してきて急ブレーキ!なんてケースは滅多にないし、追い越し車線をダラダラと走り続けるようなドライバーもいない。もしそれをやったら、日本以上に猛烈なパッシングを浴びせられるのがオチである。東西ドイツ統合直後は、アウトバーンの掟を知らない旧東独地域のドライバーが危ない運転をしていたが、いまではかなり落ち着いてきた。逆に言えば、速度無制限だからこそ、高速道路を安全かつ有効に利用するためのルールの大切さを、ドイツ人はどこの国民よりも深く理解しているのである。
 いまどきのクルマなら、100km/hを大きく超える速度で走っても必要以上の緊張を強いられたり、運転に高度な技術を要求されることはない。必要なのはモラルでありルールである。ドイツ人のように高度なモラルで高速移動を手にするか、緊張感のないダラダラした状態のまま低速走行に甘んじるか。僕なら迷わず前者を選ぶ。

ページトップへ