コラム

首都高フォーラム

Part-1

 首都高中央環状線・山手トンネル新宿~池袋間の開通を目前に控えた12月22日、それを記念するNPO法人「mobility21」主催のシンポジウム『首都圏 高速道路の未来を考える』が東京都内で開催された。当日は2部構成で、まず第1部では、早稲田大学商学学術員教授/財団法人道路経済研究所理事長の杉山雅洋氏、そして首都高速道路株式会社執行役員の渡口 潔氏による基調講演が行なわれた。

 杉山氏の講演テーマは「首都圏の高速道路のあり方と課題」。ここでは、首都高速道路の整備の歴史、料金体系のあり方などについて世界の大都市の事例を引用しながらの解説が行なわれた。首都圏のような3000万人もの人口を抱える大都市圏は世界に例が無く、交通インフラの整備が非常に重要。そのために行なわれてきた首都高の整備、拡充の言わば最後の仕上げが外環道、圏央道、中央環状線の“三環状”の開通であり、その実現によって都心の渋滞は劇的に緩和ことになるだろうという。

 そして、それと並行して議論されるべき問題として料金の問題が挙げられ、昨今の無料化論議に対する疑問も呈された。現状の首都圏を結ぶ高速道路の料金体系は、均一料金と距離別料金が混在していて解りにくい。これに関して杉山氏は、首都高の距離別料金制への移行に続いて、外環道や中央道の高井戸~八王子間、アクアラインの距離制への統合を行ない、NEXCOの高速道路から首都高へ乗り入れる際の乗継ぎ基本料金を撤廃し、最終的に首都高とNEXCO高速道路の車種区分の統一化を図るというステップを、2020年頃までに段階的に踏んでいくことが必要だと提案した。

 また、無料化論議に関しては「首都高速道路が無料化された場合、一般道との交通量の均質化が起こり、高速道路のメリットを享受できなくなる」こと、並びに「無料となった場合、道路の維持管理は現在の利用者負担から納税者負担に移行せざるを得ない」ということなどから賛成できないと述べた。

 続く渡口氏の講演は、それを受けての「首都高ネットワークを支える距離別料金制導入の意義」がテーマ。利用距離に応じた料金は合理的且つ公平であり、また接続する三環状やNEXCO高速道路、更には一般道まで合わせた自由な経路選択、乗継ぎ負担の軽減などによって、首都圏の有料道路全体の有効利用を可能にする第一歩となると語られた。

 現在、意見募集案として提示されている料金案については、東京線利用距離の中央値が18.2kmということを勘案して、利用距離19km以上で、現行の700円を超え上限1200円までの料金となる利用者数を46%と半数以下に設定。残る54%は現状維持もしくは現行料金より安く利用できるように配慮している。この距離制移行によって、当面は平均利用距離は短くなるが利用台数は変わらず収入もほぼ同等と想定。そして長期的には新規路線の開通、渋滞の緩和、交通需要全体の増加という要素によって利用台数、平均利用距離を伸ばすことで収入の増加に繋げたいという。

 第2部ではこれらの話題を受けて「首都圏 高速道路の未来を考える」と題したパネルディスカッションが行なわれた。進行役はモータージャーナリストの清水和夫氏。パネルリストには、前出の杉山氏、渡口氏、更には東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻教授の家田 仁氏、モータージャーナリストでありJAF理事の岩貞るみこ氏、交通ジャーナリストの清水草一氏が加わった。

 まず話題となったのは、やはり主に渋滞と料金について。清水草一氏「とにかく問題は渋滞。距離別料金制は何より渋滞緩和のため」が言うと、岩貞氏も「渋滞するから高く感じる。道路整備やITSの活用などによって渋滞を無くしてクルマをスムーズに流すことが必要。それは事故防止、そしてエコにも繋がる。」と発言。これらの意見に渡口氏は「首都高の課題はずっと料金と渋滞。日本の高速道路の渋滞による経済損失計2000億円のうち6割以上が首都高がもたらしている」といい、距離別料金制導入と三環状整備という現在の施策への支持を求めた。

 首都高設備の老朽化にも話は及んだ。「首都高はもうすぐ50年。今後も使い続けるためには修繕、整備のためにお金も人も要る。モビリティの環境を次代に引き継ぐのは我々の役目。渋滞が無くなればそれでいいわけではない」と言う家田氏に対して、渡口氏は「建造物やトンネルの多い首都高の維持管理コストはNEXCOの約4倍。しかもマンションのように使いながら直さなければならない。これらの費用は償還コストに加えて4~5千億円。頭が痛い。」と率直に返答した。

 更に家田氏は「人と人を繋げるモビリティが破綻したら日本は沈んでしまう。距離別料金制と三環状整備で、ようやくお膳立てが揃った。次は我々人間がスマートなドライバーにならなくては」と発言。続く杉山氏の「これからの道路にはマン・マシン・インフラの有機的な繋がりが必要。その前提として、人それぞれが納得できるシステムが必要だ。」という意見に対する、渡口氏の「ようやく首都高は“スマートドライバー”を語れるだけのシステムができたと思っている。今後もそれを実戦できる道にしていきたい」という言葉で、ディスカッションは締めくくられた。


○Part2

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