流体刺激と車群現象
~なぜ起きる高速道路の多重追突事故!~
高速道路を走りはじめると、しばらくの間は、スピードへの恐怖心や周囲の景色などが刺激となって、ある程度の緊張感を保つことができます。しかし、運転中に必要な情報が次々と流れるように視界に飛び込んでくるため、時間の経過とともにドライバーはストレスを感じるようになります。このようなストレスを「流体刺激」と呼んでいます。
さらに運転中の視界は、加速とともにどんどん狭くなっていきます。静止時には180度近くあった運転視界も、時速100Kmを超えると40度近くの範囲しか確認できなくなります。このようなストレス(流体刺激)から逃れようとドライバーは、無意識のうちに前方を走る大型車両の後方パネルやテールライトなどを見つめて走るようになります。自分と同じ速度で走る前方の車両に視線を合わせることで、あたかも静止しているものを見ているのと同じ感覚になり、ストレスから解放されると錯覚するのです。
特に流体刺激の危険性は、夜間走行時に多くなります。日本の高速道路は中央分離帯を挟んだ対面型が多いため、前照灯をハイビームにすると対向車が眩しいなどから、ロービームとして走る機会が多くなります。ロービームの照射距離は約40m。この範囲内に前方の車両を捉えようとすると、極端に車間距離を詰めることになるのです。
その結果、速度に応じた安全を確保するための車間距離から、流体刺激から逃れるための車間距離に変化していくのです。このような考え方を持つドライバー同士が数十台ずつの一団となって、等間隔で異常接近して走る状況を「車群現象」と呼んでいます。
この車群現象が、高速道路で起きる多重追突事故の大きな要因となっているのです。