コラム

後席シートベルト非着用。3つの危険性!

1.後席シートベルト着用の実態

後席シートベルトについては、JAFと警察庁が実施した2006年合同調査から、その着用率を見ると、高速道路12.7%、一般道路7.5%と、前席乗員(運転者93.8%、助手席同乗者80.4%台)と比べ、かなり低い状況にあります。

前席シートベルトについては、1985年の改正道路交通法により、運転席及び助手席同乗者に係わる装着義務化がなされ、同年9月より高速道路等における運転者の義務違反について、その翌年11月よりすべての道路における運転者及び助手席同乗者の義務違反について行政処分の基礎点数が付されるようになりました。しかし、後席同乗者については、「装着を促す」運転者への努力義務として扱われ、今日まで来たという経緯があります。そのような状況下、先の第166回通常国会において、交通事故防止と被害軽減対策の切り札として、「後席シートベルト装着義務化」を含む改正道路交通法の関連法案が可決しました。これにより、この春には義務化されることになります。

2.出会い頭衝突テストの概要        

このテストの目的ですが、走行中の車両(被害車両⇒セルシオ、加害車両⇒1Box車ノア)を出会い頭衝突させることで、双方の車両の挙動(危険度)を確認するとともに、例え加害車両であってもすべての乗員がシートベルトを着用しないと危険性が及ぶことを立証することにあります。            

なお、テスト車両に搭載したダミー(乗員)や衝突速度は、次のように設定しました。                              

●加害車両(1Box車ノア)=衝突速度は時速45Kmとし、それぞれの座席に4体のダミーを搭載。まず後部左席には、3点式ベルト着用の女性ダミー(身長145cm・体重45kg)。後部中央席には、2点式ベルト(+学童用シート)着用の6歳ダミー(120cm・22kg)。後部右席には、ベルト非着用の女性ダミー(145cm・45kg)を搭載。さらに前席には、運転役となる男性ダミー(175cm・78kg)を3点式ベルト着用で搭載しました。        

●被害車両(セルシオ)=衝突速度は時速22.5kmとし、それぞれの座席には3体のダミーを搭載。ただし、被害車両の役目は、あくまで出会い頭事故を再現するバリア(壁)としての存在なので、その被害性は甚大なものの車内に搭載したダミーのデータは、今回のテストでは採用しておりません。

3.後席シートベルト非着用!3つの危険性。

衝突の瞬間!大音響とともに被害車両の窓ガラスが飛び散り、左側面が抉り取られました。さらに進行方向右に押されながら、本来の車線を逸脱するかたちで停車しました。 一方の加害車両もフロントバンパーが剥ぎ取られ、衝突の影響で左方向に引き吊られ、半回転して停車しました。衝突そのものは、「あっ!」という間の一瞬の出来事なので、衝突の凄まじさしか目に写りませんでしたが、後ほど高速度カメラを確認すると、加害車両の後部座席に搭載した3体のダミーには、次のような挙動(被害性)が見られました。(写真1)


出会い頭衝突の瞬間!被害車両(セルシオ)と加害車両(1Box1車ノア)               

「ベルト非着用の女性ダミー」        

後席右でベルト非着用の女性ダミーは、前方に投げ出され、前席シートバックやヘッドレストに身体や顔面を打ち付けながら、車両が回転したため今度はBピラー(中央柱)に頭部を打ち付け、最後には窓枠から頭部をはみ出しました。

「2点式ベルト(+学童用シート)着用の6歳児ダミー」

後席中央で2点式ベルト着用の6歳児ダミーは、座席から投げ出されることはなかったものの、上半身が激しく前屈し、自らの膝に顔面を打ち付け、腹部圧迫されていました。つまり、2点式ベルトは前方に投げ出されることは防げるものの、頭部等が前方構造物に衝突することまでは防げないのです。

「3点式ベルト着用の女性ダミー」

後席左で3点式ベルト着用の女性ダミーは、3点式ベルトによる拘束効果(肩ベルトと腰ベルト)によって、座席から投げ出されることや上半身を前方構造物に衝突することもなく、そのままの着座姿勢を保っていました。           

この衝突テストから後席乗員(ダミー)が受けた傷害の程度を示す頭部傷害値を見ると、3点式ベルト着用を1とした場合、2点式ベルト着用が約2倍、非着用は約5倍にも達することが分かりました。加害車両ですらこの有様(被害度)ですから被害車両となると、そのダメージはさらに甚大です。             

そこで結論ですが、後席シートベルト非着用だと、

1)後席乗員自らが致命傷を負う。

2)同乗者に危害を加える。

3)車外に放出される。

などの3つの危険性が発生することが分りました。(写真2)


衝突時の後席ダミー:左席は3点式ベルト着用、中央席は2点式ベルト着用、右席はベルト非着用

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