コラム

連載「クルマを被告席に座らせないために」
Vol.5 とても便利!スマートIC

 もし高速道路に秘密の出入り口があるとしたら、誰にも教えたくないかもしれない。しかし、驚くなかれそんな便利な出入り口が実際に存在するのである。一昨年の平成16年度に国土交通省はITSの一環事業としてETC車に限定した秘密の出入り口をいくつかのサービスエリアに設置し実証実験を行った。
 この出入り口は「スマートIC(インターチェンジ)」と呼ばれ、ETC専用なので建設・管理コストが大幅に削減できるというメリットがある。実は主要なサービスエリアやパーキングエリアにはレストランやお土産屋さんなどの専用出入り口が従来から存在していた。その出入り口を応用し、ETCを使えば、僅かなコストでインターチェンジが出来上がる。しかも、地元の地域経済を活性化させる原動力となればと期待される。
 スマートICは政府が掲げるITSの社会実験の一つであるが、その運営は地元の自治体等と連携した協議会で実施されている。したがって場所によっては、利用規定が異なる場合がある。例えば時間や車種の制限がある場所も存在するので利用する人は事前にネットなどで調べておくことが大切だ(http://www.mlit.go.jp/road/yuryo/smart_ic.html)。
 しかしETC車に限定すれば、こんごスマートICのポテンシャルは高そうだ。高速道路の利用状態に応じて期間限定のインターチェンジを作ることも可能。これは観光地の渋滞緩和などに効果的だ。さらに、ロジスティックの効率化にも役に立ちそうだ。
 例えば日本の物流の大動脈となっている幹線高速道路に大型トラックのハブステーションを設けることができる。ETC専用でゲートを作れば低コストで済むわけだ。ここで小型トラックに積み替えれば、大型トラックが生活圏に流入することを防ぐこともできる。
 ETCは単なる料金自動徴収だけではなく、こらからのインフラ整備にも大いに役立ちそうだ。
 昨年「ITSの思想」(NHK出版)を出版するために実際に取材したスマートICについてレポートしてみよう。場所は上信越自動車道下りの佐久平PA(佐久平ハイウェイオアシス)だ。ここは「パラダスキー場」が隣接しており、従来のサービスエリアからもスキーを楽しみことができる。ここではETC車専用ゲートで簡単に出入りすることが可能。実際に降りてみると、狭い路に戸惑うが、カーナビがあればなんとか自分の位置を把握できる。ここでは地元の地域観光振興や観光地へのアクセスが便利になると関係者は語っている。
 毎年大型連休で渋滞が予測される行楽地。例えば、那須サービスエリアのスマートICを使うと目的地まで2時間も短縮できるケースもあったようだ。これには利用者は大喜び。あまりにも便利なので実証実験の期間を延長するICも増えている。
 しかし問題がないわけでもない。先ほど述べた通り、自治体と共同で運用するということは、スマートICの整備/管理のコストは地元が負担するということになりそうだ。地域により財源の確保が異なる日本の地方行政では、どこまでスマートICのポテンシャルを引き出せるが不安だ。
 また、ある地域ではスマートICの出現により、他府県ナンバーのクルマが流入し事故などが心配だと反対するところもある。たとえば来年F1が開催される富士スピードウェイは東名御殿場ICか大井松田ICでアクセスすることになるが、大渋滞が予測されるので足柄サービスエリアにスマートICを作ろうという案がある。しかしこれには地元住民は生活道路が犯されるという不安で反対しているという。スマートICの実証実験は今年の秋頃まで続けられそうなので、興味のある人は是非利用してみてはどうだろうか。
 このようにETCは様々な利便性をもたらすことができる。今後はETCを利用した駐車場やGSの自動決済も実用化するだろう。

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